ひらがなのはなし


ひらがなはまるではだかのようだ。
かわいいともかんじるし、むごいともおもう。
やわらかくて、どこかざんこくで、やさしい。

ひらがなはまるではだかのようだ。
しょうじきなきもちをもじにしたいとき、ひらがなをつかう。
まるでおおいかくすように、まるでさらけだすように。
ぼくのきもちはたいてい、ひらがなでたりる。
こどもじみたかんじょうだし、かんじにするほどしんこくじゃなかったり、あいまいだったりする。

ひらがなはまるではだかのようだ。
だからだろうか、じゆうをかんじる。
かんじはかたにはまっていて、しんこくなふんいき、おとなのかんじ。
そのてんひらがなは、じゆうで、むじゃきで、あいまいで、でもすなおで、こどものかんじ。
それでもひらがなはこわいとおもう。
おなじことばでもべつのいみをもつせいだろうか。
このかんじょうはなんだろう。
ほら、そんなときにも、ひらがなでかくとちょうどいい。
きもちにぴったりおさまるんだ。

ひらがなはまるではだかのようだ。
とても、きれいだとおもう。
でもそれがぎゃくにこわくて、きたないことばをつかいたくなる。
ひらがなでよごしたくなる。

ひらがなはまるではだかのようだ。
なんだか、せいのにおいがする。
でも、いきているかんじもするし、しんでいるかんじもする。

ひらがなはまるではだかのようだ。
なんだか、はだかってこわい。
うまれたころのすがたと、かわりはてたすがた。
はだかはすべてをひょうげんする。
ぼくのはだかも、きみのはだかも、おそろしいもんだな。
でもあいすべきもの、なんだろう。

ひらがなはまるではだかのようだ。
とてもしっくりくることばだ。
ひらがなはまるではだかのようだ。
ほんとうにそうおもう。

こんなことをかいているぼくは、もちろんひらがながすきだ。
かんじもすきだけど、ひらがなのほうがすきかもしれない…いや…んーどうだろう。
でも、ひらがなにはそれなりのこだわりがある。
むかしは、「ひらがなばっかりつかうだなんて、なんてばかみたいなんだろう!」とおもっていたけど、いまはちがう。
ばかっぽいなあとおもうこともあるけど、つかいかたしだいかなあともおもう。
だから、ぼくはこれからも、こんなこだわりをもって、ひらがなをかきたいとおもう。

ひらがなはまるではだかのようだ。
そんなことばをおもいついたのでこのぶんしょうをかいてみました。

おしまい。