あんず飴 透明な温度を下げていく あなたのぬくもり かすかな光が胸をさす 氷のようなつめたさで 肌が焦げていく においが鼻につく 電車の中では冷房が 滝のように流れている さらさらと風鈴がゆれる 夕暮れを知らせる蜩が かなしげに鳴くのは、そう あなたとの出会いを 歓迎していないから すももに水あめを巻きつけたものが あんず飴と呼ぶなんて おかしいと思いながら 甘酸っぱさを噛み締める 涼しくなった夜の風 あなたとわたしを巻き込んでいく たぶん今日は帰れない 帰らない、のかもしれない あんず飴でべたべたになった わたしの手をあなたは握った |