屋上映画


屋上では映画がひっきりなしに流れている
でも誰もいない
わたしひとりしかいない

屋上から見る景色の半分は空で
誰かが火をつけたみたいに
スクリーンは赤く燃え上がる

こつり、と靴の音がして
わたしは振り向くと
そこにはあの日の君がいた
君は真顔でわたしを見ている
わたしは少し笑ってみせた
すると突然雨が降り出し
わたしの目からも涙がこぼれた

それはどしゃぶりの雨で
服はびしょぬれになり
顔もぐしゃぐしゃになった
でも君だけはなぜか雨に濡れずに
まだそこに立っていた

君は何も言わない
わたしは何か言おうと思ったけど
言葉が見つからなくて黙った

そしてふっと雨は止み
空は黒く塗りつぶされていた
無数の星がまたたいている
もし流れ星が流れたら
君は何をお願いするんだろう
そんなことを考えていたら
君はわたしに近づいてきた

君は何も言わない
わたしも何も言わない
わたしは思考回路をめぐらせて
言いたいことを探していた
そしてしばらくすると、見つかった
思わず、あっ、と口にしそうになった
でも、こんなことを言ってどうするんだろう
そう思ったけど
沈黙に耐え切れず、あの、と言って
君の瞳を見て言った

好きです

その言葉に君は、少しだけ微笑んで
ありがとう、とだけ言った
そして君は、振り返り、出入り口のほうへ歩いていく
だんだんと影が薄くなり、風が吹くと消えてしまった

わたしは大声で泣くと
頭ががんがんと痛くなり
その場でうずくまった




目が覚めた時
そこは自宅のベッドの中で
わたしは頭に冷たいタオルを乗せていた
そして、涙を流していた
夢だったんじゃないか、夢だったような気がする
それでもうれしかった、でも少しかなしかった
わたしはまたしばらく泣いて、眠りに就いた





屋上では映画がひっきりなしに流れている
今日も、明日も