屋根裏でみた秘密


日曜日の夕方
母さんが買い物に出掛けるのを見送ったあと
父さんが 屋根裏に行ってみないか と言った
ぼくは 屋根裏なんかあったの? ときくと
あるんだよ と父さんはフフッと笑った

案内されるがままに ぼくは屋根裏と呼ばれるところへ向かった
こんなところにはしごがあったなんて!
ぼくはどきどきしながらはしごをのぼった


屋根裏についた
そこにはびっくりするほどの量の絵があった
描き途中のもある
キャンバスに様々な色でなんともいえないようなかたちのものが描かれている

ここは父さんの秘密のアトリエなんだ 
父さんは心なしかうれしそうに 昔絵描きを目指していてね と言った
ぼくは へえー… とあたりを見回した
どれもよくわからない絵ばかりだ
芸術ってそんなもんだと思うけど ぼくにはさっぱりわからない

ぼくは丸がたくさん描かれている絵を指差して これはなんの絵なの? ときいた
それはスープの絵だよ と父さんは言った
母さんが作ったスープのにおいで思いついたんだ と父さんはうれしそう
なるほど わからなくもない
母さんが作るスープは野菜がたくさん入っていて とてもあざやかだ
じゃあ あの絵は何?
ぼくは書きなぐったような 赤と青と黄色の絵を指差した
それは 母さんのお腹の中に おまえがいるとわかったときに描いたんだ
あまりにうれしくてね と父さんはそう言ってぼくの頭を撫でた

ぼくがその絵に見とれていると
そろそろ母さんが帰ってくるぞ と言って 父さんは下へおりるようにぼくの背中を押した

父さんが絵を描くなんて知らなかったよ ましてやアトリエがあるなんて!
ぼくがそう言うと 父さんはしーっと口に指をあてて
これは秘密だから 母さんに言ったらだめだよ
それと 屋根裏へひとりで行ったらだめだよ 危ないからね
と言った
わかったよ とぼくと父さんは指切りをした


ぼくは父さんの秘密が知れて すこしうれしくなった
買い物から帰ってきた母さんに 何にやにやしているの? と言われて
あわてて口をきゅっとむすんだ
あぶない ふとした瞬間に口から出てしまいそう!
今日は早く寝るね と言ったら
母さんが あらいい子ね と笑った



(ユタからのお題)