さんざめく、夏


(きこえる)



プールへ出掛ける
こどもたちの声
真っ黒になって
かえってくる



ノートには
書きかけの小説
風に吹かれて
めくられていく
白いページ



蝉が鳴き始めると
蒸し暑さがいっそう増して
駆け込んだ電車は
まるで冷蔵庫のよう



日焼け止めのにおいが
胸を掻き立てる
明日はないよと
赤がにじみだす



日が暮れる頃
どこからか
お祭りの音
あなたは
わたしの手を引いて
行ってみようと
そう言って
みえないほうへ
進んでいく



たくさんの人の
あいだをぬって
花火が打ちあがる
あなたの目の中が
きらきらしているのに
気がついて
くぎづけになっていると
どこみてるのって
あなたは笑って
くちづけをした



(さんざめく、夏)



きこえるのは夏の音