ほんとうはここにあって、真実はここにはない。


あなたみたいに遠くへは行けない。
ぼくには足があるから。
そういっていいわけを考える。
うまい、うまくないかはべつとして。
とりつくろう、縫う、パッチワーク、みたいに。
きれいかどうかはべつとして。
うそをつくの。
うそじゃないうそを。
ほんとうのことを。
うそにしていうのさ。

あの子が書き上げる物語は
あの子のものであり、あの子のものでない。
ぼくのこのうそも、風に乗っていくのさ。
あなたの胸で
消えるか、残るかする。
いちいち気にとめてはいられないので
ぼくは風に身を任せる。

この世界は暗い。そして明るい。
あなたが知っているのは
どちらでもあり、どちらでもない。
ニュースは流れる。
ぼくは風に身を任せたまま。

ふ、と。

涙が出た。
どうもしていないし、大丈夫、なのだけど。
涙が出た。
おもわず、すばらしいとぼくはいった。
それを見て
きみも、すばらしいといった。

なぜって、それは

こころがあるからだ。