赤色の憂鬱 赤い紐、握り締めて、はなせない。 夜が、ひたひたと、近寄ってくる。 なみだを流しても、だれも気づかない。 だってそう、耳鳴りがするほど、しずか。 キィン―― つめたい、銃声がきこえた。 いちどだけ、胸がぎゅっとなって、放つ。 きみだったらそれをなんて言う。 勘違いだったって、きこえないふりをする。 得意になったっていう、それ。 赤い目。 夢になってしまうのがこわくて、ねむれない。 だけどぼくは、ずっと現実になんかいられない。 かなうことなんかないって、 はじめからあきらめていたけど、 なんでだろう、そればかり思い出してしまう。 無駄ばかりじゃなかったのかなって、思いたくなって、 空が赤くなる頃なんかに、ようやくわかったような気がした。 あのとき、ぼくに見えていたまぼろしは、 今もまだ、色褪せないまま残っていて、 お守りみたいになっている。 ちいさなかみさまがいるみたいに。 |