ジンジャーエールに関する宇宙のはなし 渇いた喉に、 ジンジャーエールを流し込む。 ありとあらゆる細胞に吸収され、 ぼくは炭酸の泡で息をする。 ぱちぱちと、星がまたたくような音がひろがっていく。 なんとなく宇宙はそこにあって、 ぼくがいまここにいることも、宇宙の謎のひとつであるのに、 人々は目をそらし、 極端に遠いところ、または、極端に近いところばかりをみている。 人力をあやつり、あの人はいま、 天才と呼ばれ、テレビの中でインタビューに応じている。 人々はそれを喜び、一部のものは舌打ちをした。 フラッシュがたかれている。たくさん、かぞえきれないほどに。 あの人はそれを浴び、すてきな笑顔をつくっている。 寿命がちぢまっていくことにも気づかずに。 ぼくはぼんやりと、そんな映像をながめていた。 そういえば、 昔国語の教科書に、エックス線の目を持っている人のはなしがあった。 ものが透けてみえる、という特殊な目を持っている人が出てくる物語だ。 くわしいことは忘れてしまったけど、それだけはおぼえている。 ぼくは考えた。中学生くらいのあたまで。 その目があったならば、ぼくは、 スカートの中の宇宙を知り、とんでもない発明をしていただろう、と。 次第に、気が抜けていってしまった。 ジンジャーエールはただの液体と化し、排水溝に流される。 おとなってつまらないものなのだろう。 その頃のぼくはすでに知っていた。 そして、 その頃のぼくはまだ、なにも知らなかったのだ。 |