蓋されたガラス瓶


ガラス瓶の中には 炭酸の抜けた水
ひとつだけ浮かんでる 赤色のチェリー

忘れたの? 忘れてないよ
覚えているよ 嘘ばっかり

かなわない夢は 色褪せずに
かなった夢は 今じゃどこにもない
たくさん失ったけど
ここにないものはわからない

ここにあるはずで ここにないものは
ここにないはずで ここにあるものに
覆われてる
ひそむ黒い影 ほくそ笑む

マジシャンは得意のポーカーフェイス
誰にもわからない程度に彼は
意味ありげに口角を上げていた
気付いた者にだけ聞こえる声で呼ぶ
さあ、さあ、夜は深い
さあ、さあ、こちらへどうぞ

炭酸の抜けた水に 浮かぶ赤色のチェリー
瓶に口をつけた 次の瞬間には、そう
誰もいない寝室へ戻る 出口のないゲーム
キーワードを握る 体温残るシーツ

蓋されたガラス瓶 吸い取られる精気
覚えている嘘は 忘れてしまった真実(ほんとう)へ変わる