掃除機は嘘を吐かない


大好きな君が
クッキーを食べこぼしたから
掃除機をかけたら
君まで吸い込んでしまった
僕は慌てて、中身を空けて
ゴミを引っ張り出したけど
君は出てこなかった
全部ゴミを出したのに
君は出てこなかった
困った僕は
とりあえず手を洗ってから
もう一度君を探すことにして
洗面所へ向かった
そしてリビングに戻ると
君はふつうの顔をして
またクッキーを食べていた
どこに行ってたの?と聞いたら
掃除機の中、と答えて
掃除機の中で何してたの?と聞いたら
ちょっと調べもの、と答えた
気にしないで、なんて微笑んで
次の日僕らは別れた
理由を聞いたら
あなたとは暮らせないから、という答えだった
掃除機の中を見ればわかるの、と
からりとした声で言った
僕は一体、君が何者なのか
わかりきる前に
大好きなままの君は
僕の前から姿を消してしまった