おうちへかえろう 「さあさあ皆さん、そろそろ冬眠ですよ」 その声をきいて、ぼくたちは数センチ浮いた。 つまり都会っ子の「なつやすみですよ」と同じ意味をもつ言葉なのだ。 家に帰ったときの「おかえりなさい」と同義語でもあるのだ。 あったかいごはんと、あったかい布団と、あったかい、、、なにか、 やさしさみたいなものがあるところなのだ。 家とは、そういうものであってほしいのだ。 ぼくたちはつめたい風をきって走る。 みんなちりぢりになっていく。 はいた息が空にのぼって、おおきなしろいかたまりになり、 いつしかゆきになって、ぼくたちは街に舞い降りる。 待ちのぞんでいた夜だ。 ちかちかと星はおどる。 たのしいのはこれから。 いつだってそうおもっていた。 だからぼくたちはポケットから手を出して歩き、走るのだ。 つめたいほうがいいこともあるんだ、あったかいことにすぐ気がつく。 ねむりの浅い日々をこえて、ぼくたちはほんとうのねむりにつこうとしている。 人生とは、ほんのすこしまえのはなしを、ずうっとながいあいだ語りつづけていくことなのだ。 しかし、しらないうちに家についていることがよくあるように、ぼくたちはそのことをよくわかっていないのだ。 |