ミルクセーキ


きみは まさか、
さかなじゃないかと思ったんだ
背骨が あばらが
見たことのあるような
かたちをしていたから

コンタクトレンズをはずした
いつもと違う世界だといった
きみが見ている世界をうたがってはいけない、
うそがすべり落ちそうになった
だって真実が見えるひとには
ぼくは見えないからだ

きみの白くて細い腕のなかには
白い骨があるのだという
ぼくには見えていないけれど
白い骨があるのだという
どうして見えないのにあるんだろうね、
ぼくはたしかめるように
きみの手首を折った

白いブレスレットをあげよう、
なくさないようにしまって
大事そうなポケットはあたたか
きみは笑っている
きみは笑っている
ぼくは、
こんなにも大事なきみのなかにさえ
愛を感じなくて
じわり、
抱きしめた

するすると腕は巻きついて
二度とぼくは自由になれなかった
いくつか過ぎ去ったあとの
遠い、春の日だった