春さめる


生きたり死んだりをくり返しているうちに、桜は咲いて散ってしまう。


ああ、いつもそうだ――


春は眠っているころ、やってくる。
うそみたいにすべてをうばって、とき放ったみたいにわらう。
あかるい光はまぶしくてみえなくて、ふらつく。
どうかしているみたいに。


――どうかしているのかな。


どうしても、咲いたら散ってしまうというのに、
どうしてか、散るために咲いているようには、みえなくて、
一瞬が永遠につづくような気さえしてしまう。


……どうかしているのかな。

どうかしているにしろ――



どうにもならないくらいに、春になってしまった。
今年も。


ああ、ほんとうに――


死んでゆくようだ、まるで、ぼくが殺しているみたいに。

(生きている)

なみだをうかべるようにして、うつくしい終焉をもたらす。


けれどもきみは、死ぬために生まれたわけじゃないんだと思う。
ぼくはそう思う。


だから、愛すよ。